おじいさんの知恵袋。

ちょいと前に、
植樹を行う場所の地ごしらえをした。
そのとき一緒に作業をしたおじいさんの言葉を、
最近よく思い出す。


今回の植樹は、
スギ林からの樹種転換でもある。
山は資源であり、
樹種によってその使い道は多様で、
何がいいというわけではない。


資源としての価値が高ければよさそうでもあるけれど、
それはどのような尺度で測るかによるから、
何とも言えない部分がある。


ただ、
手を加えた行く末は見ていきたい。
手を加える意味は考えていきたい。
と、思う。


そして、その地ごしらえの作業だけど、
木を運んだり何だりと、
まさに肉体労働。


おじいさん
「きついですね。」

「ほんときついですね。腰が痛いです。」
おじいさん
「そうですね。腰は傷めないようにしないと大変です。
 前やってしまったけど、
 腰をやると何も出来なくなる。」

「腰を傷めないためにはどういう風にやったらいいんですかね?」
おじいさん
「重い物を持ち上げるときは、
 持ち上げるよって、腰に言うんです。
 そしたら腰を痛めないんです。」

「そうなんですか。(どうなんだ?)
 どうやるんですか?」
おじいさん
「腰にね、持ち上げるよって、言うんです。」

「腰に先に伝えてやるんですね。
(普通に持つのとどう違うんだろうか、
 しかし、違うんだろうな。)」
おじいさん
「はい。テレビで言ってました!」

「ほー!(テレビー。)」



あのときは、心の中で、テレビかよ!とそれはそれはつっこんだけど、
最近は、
腰に言うってのが、少しわかってきた。
そうすると、
動き方が変わってくるというか、
決まってくる。
身体を傷めない動き方、使い方になってきて、
型ってこうやって出来ていくんだろうかと思ったりする。


おじいさんの言った言葉はテレビで言っていたことだけど、
おじいさんの中に残っていたのは確かで、
今では僕の中にも残っている。


腰に話しかけるときは、
いつも決まってこのときのやりとりが浮かぶ。


きつい瞬間だけど、
思わず笑っちゃうから、
こんなおじいさんの知恵袋も、
いいもんだね。